2021年上半期マイベスト映画トップ10(劇場公開・配信)
2021年は劇場公開された邦画が本当に素敵で、影響を受けたものがたくさんあります。配信限定公開の映画も、新たに配信に追加された過去作品も素晴らしかったので「劇場公開」と「配信」で分けてベスト10を考えました。しかし5位以内のものは実質1位ですよね…。
劇場での新作24本、配信は新旧含め52本、計76本中のランキングです。
2021 年上半期劇場公開新作 マイベスト映画トップ 10
1位 ヤクザと家族 The Family
爽快、絶望、希望、切なさ、受け取るこちらの振れ幅がとんでもない量やってきて「いい映画を観た!」って実感を与えてくれました。重い社会問題を扱う誠実さ、壮大な話と個別具体的な人の物語、稚拙じゃないのに分かりやすく面白い!のバランスが最高。綾野剛がスタントなしで車に激突したり、身体的に体当たりすぎるシーンの迫力よ…。正直グロ描写が苦手なので手に汗握りましたが、見ておかなきゃと思わせる説得力が凄まじかったです。作品自体からも、公開後のSNSでの熱心な広報活動からも、役者さんも本気でこの作品を大切にしてることが伝わってきてそういうところにもぐっときました。
2位 くれなずめ
高校時代の帰宅部仲間が友人の結婚式の余興のために集まることから始まるお話。映画を通して個人的なことを語る行為にグッと傾いている気がして、そういうものにしかない爆発力のある作品に愛情を持ちがちな自分に気付きました。わたしがこの映画を好きでいてあげたいんだ、となぜか思ってしまう(何様!?)大事な映画です。ブログも書いた。
アフター6 ジャンクションに送った映画の感想メールを読んでもらったのもいい思い出。とあるシーンの藤原季節さんの顔の演技に圧倒され、初めて俳優さんのファンに…というか沼に浸かりました。
3位 あのこは貴族
男をめぐる女同士の関係、 東京と地方を描く作品は「こういうもの」と思ってしまっていた自分に気が付いてがグラっとさせられる。質感は決して派手ではないけれど、今後シスターフッド映画潮流のゲームチェンジャーになるのかもしれないと思うと、目撃できたことに興奮します。同じ東京で違う世界に生きる二人が画を通じて理解できるほど、美術の膨大な繊細さが圧倒的な手数であることが素人でも分かりました。お嬢様の門脇麦とガッツでいく水原希子、 普段だったら逆のイメージの主演二人の配役もすでに勝ってる。 自分の映画の見方を変えてくれてくれた作品で忘れられないです。
ブログも書きました。
4位 すばらしき世界
主演の役所広司があるシーンでボロボロ泣き始めるんですけど、美しいものに初めて出会って衝撃を受けているんだろうことが顔の演技で伝わってきました。そして美しい人や美しいものにこの年齢になるまで出会えなかった人生を思うと、あまりの哀しさに電流が走りました。優しいって何だろうとしばらく考え込んだ。自分にない体験をこうやって映画で知られることに感謝の気持ちがわきます。すごかったです。
5位 燃ゆる女の肖像
ラストシーンでわんわん泣きました。世界に傷つけられてるこ とに無自覚でいさせられてきた女性たちに観て勇気をもらってほしい。いつの時代にどんな形で傷ついていたとしても、人と人が感性で刺激しあい自分を残 そうとする希求が確かにあったことを信じさせてくれることがこんなに力強いことない。素晴らしいです。画も美しい。
ブログも書きました。
6位 シン・エヴァンゲリオン 劇場版
7位 まともじゃないのは君も一緒
人とのコミュニケーションが苦手。数学ひと筋で生きてきた予備校講師の成田凌を、教え子の清原果耶ちゃんが手ほどきして 「普通」を教えてあげようとしてあげる映画。主演二人の演技が 競技のようにビシビシ決まっていって、かつそれが変に毛羽立つ感じもなく、観ていて気持ちよすぎました。物語の説得性とそれ がちゃんとマッチしてるのもすごい。『街の上で』を交互に観てハイパー隠キャラ成田凌とイケメン激モテ成田凌の振り幅で気がおかしくなりたい。
8位 ファーザー
前情報一切無しで見るほうが良い作品だと思うので何も言えない、新しい体験でした。配信で観るにはきついと思うのでまた上映されるといいな。
9位 映画大好きポンポさん
天才映画プロデューサーのポンポさんのもとで映画通の青年・ジーンが初監督映画を撮る過程を描く映画です。仕事への自分の姿勢が不甲斐なくてとても落ち込んでいた時期に観たこともあり、この明るい物語にすっごい元気をもらいました。映画の配役、脚本、撮影、 編集と個別具体的な仕事の内側を描きながらもとても普遍的なメッセージを含んでいて、この 映画自体が内容と同じように愛を持って製作されたんだろうと思うと愛おしいです。
10位 のさりの島
主演の藤原季節がおばあちゃんにお灸をしてあげながら会話するシーンがあるんですけど、すごいの。 背中側から写してるの。一見してえ、そう撮る?って思うんだけど、 映画史上に残ってほしい構図・ 顔・間なの。手元と表情と構図 でここまでの二人の関係の近づき方を見せることできるんだとはっとし、そしてこれからは変わってしまう予感を本能的に感じて涙が出ました。あれが撮れたときの現場、良い時間だったんだろうな。人生のうちでこういう奇跡を捉えられる瞬間に出会えるのは幸せだろうなと、きらめきを感じました。この映画もブログ書きました。door-knock.hatenadiary.jp
2021 年上半期配信(新作・旧作)マイベスト映画トップ 10
1位 佐々木、イン、マイマイン (Primeレンタル)
主演の細川岳さんが実体験をもとに企画、内山拓也監督が徹底的に 2 年半聞き取りをして脚本化したという、人生削ったみたいな映画。去年観たんですが、 2020 年は才能ある好きな人たちがたくさん亡くなってしまったから、「佐々木」という自分にとっての過去のヒーローの人生を覗いていくこの作品と重ねてしまい、まっすぐ観ることができませんでした。でも観返したら自分が弱すぎたって思えた。今年一番好きな映画になりました。
2位 なぜ君は総理大臣になれないのか(Netflix)
現衆議院議員(立憲民主党)小川淳也さんを追った 17 年分のドキュメンタリー。観た周りの方々が次々と食らっていたのですが映画館も映画祭でも観過ごしてしまい、もう機会ないと思ってたらまさかの Netflix に追加されたので、超観てほしくて 2 位にしちゃいました。 真面目に構えて見始めたのに、 ボロッボロに泣いてしまい自分でもびっくりした作品です。
3位 ソウルフル・ワールド (Disney+)
大好き。友達の子ども全員にブルーレイ買ってあげたい。将来に夢を持っても持たなくてもいいし、夢叶えたあとに繋がって いく日常も愛していこうねという新しいメッセージ。学校の先生たちは気軽に文集に夢を書かせるけど、 じゃああなた方は今夢の世界にいるんですかって思ってた、可愛くない思春期だったな。こういう作品があったら救われたと思う。ファンタジーだけど設定が緻密なのでぐっと没入できるのも好きでした。
4位 止められるか、俺たちを (Netflix)
60〜70 年代のアングラ文化を牽引したと言われている若松孝二監督と、若松プロに集まった若き才能たちの伝記的映画。1人女性の助監督として加わった門脇麦さんの奮闘ぶりとめちゃくちゃな映画製作現場が凄まじい。 映画評論家を経て若松プロに参加する荒井晴彦役の藤原季節さんに大ハマりして過去作をあさっていたところ衝撃的に食らった作品なんですが、本当に凄い人だったんだと確信できて幸せでした。荒井晴彦さんが脚本を読んで自分の登場シーンを増やすよう修正してしまい、映画観賞後季節さんに「君はよくやってたと思う」とコメントしたらしいという裏話含めて最高。映画の続きか。
5位 エイス・グレード 世界でいちばん クールな私へ(Prime)
6位 WOOD JOB!~ 神去なあなあ日常~ (Netflix,Prime)
笑えてハッピーな映画、 大きくラブです。若者がチャランポランな理由で林業研修プログラムに参加することになり、 なんか頑張ることになる話。お正月あたりに観たんですけど、 すごくちょうどよかったです。 これも周囲に強くお勧めされたものなので人の影響は受けるものですよね。チャラい染谷将太の顔と化粧っ気のない長澤まさみの色気が最高。
7位 LEGO(R)ムービー (Netflix)
8位 彼の見つめる先に (Prime)
目の見えないことをクラスメイトにからかわれている高校生のレオ。両親や幼なじみは彼に過保護に世話してしまうけど、転校してきた少年・ガブルエルは彼に普通に接してくれて映画館 に行ったり自転車に乗せたりするんです。それで恋が始まるんですけど、ガブリエルが教えてくれる音楽が Belle & Sebastian だったりするんですよ!2 人で踊るんですよ!そりゃ良いでしょうが!光が照っていて画が明るいのも素敵。大好き青春映画。
9位 フランクおじさん (Prime)
セクシャリティを扱う素敵な映画は最近たくさんあると思うんですが、その中でもとても好きです。家族のお話でもあるし、同性愛者に対するキツイセリフも出てくるのが辛いけど、一番誰かと分かりあいたい と思うところを持っている人がたどり着く折り合いのつけかた、 家族のもち方がとても繊細で爽やかで愛にみちてると思いました。アマプラオリジナルだけど映画館で観てみたかった。
10位 隔たる世界の2人 (Netfix)
ネタバレを知っていても作品を受け止める障害にならないと思うほどのインパクトがありました。アカデミー短編賞受賞作。映画ではよくある物語のループする構造も Black Lives Matter をテーマにしたこの映画に採用されていることにズドンときました。30 分と短いのも意図を感じました。
【劇場公開新作】
1 ヤクザと家族 the family
2 くれなずめ
3 あのこは貴族
4 すばらしき世界
5 燃ゆる女の肖像
6 シン・エヴァンゲリオン劇場場
7 まともじゃないのは君も一緒
8 ファーザー
9 映画大好きポンポさん
10 のさりの島
【配信】
1 佐々木、イン、マイマイン(Primeレンタル)
2 なぜ君は総理大臣になれないのか(Netflix)
3 ソウルフル・ワールド(Disney+)
5 エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ(Prime)
6 WOOD JOB!〜神去なあなあ日常〜(Netflix,Prime)
8 彼の見つめる先に(Prime)
9 フランクおじさん(Prime)
10 隔たる世界の2人(Netflix)
配信では『サウンド・オブ・メタル』もとても素晴らしかった。劇場公開作品では『茜色に焼かれる』に心をズタボロにされました。ふるえるほど感動したシーンがあったんですが、女性の生きにくさってこうでしょうと描かれる部分が今でも不意に頭をよぎって、「理不尽!!!!!」とめちゃくちゃ怒ってしまう時があります。こうなってしまうんだから良い映画だったんだと思うんだけど、なんだかまだ消化できなくてランキングには入れられませんでした。
映画ではないですが上半期ハマった映像作品第1位はHuluで配信中のSKY-HI主催のボーイズグループ育成オーディション『THE FIRST -BMSG Audition 2021-』です。
応募者200人越えの段階から参加者を名前で呼んで、当たり前のように立ってノリノリで聞いて審査。その人がたとえ落ちてしまっても、確実に勇気になるような経験とアドバイスを持って帰らせてる姿がカッコ良すぎて衝撃的でした。1対1で与えられる大きさの愛情を、1対いくつになっても関係なく届けることってこんな方法で可能なのか。
音楽と人へ愛の深さと語彙の豊かさに感動してマジでずっと泣いてる。好きになったのがこの人でよかったと思う気持ちを毎日更新してくれるSKY-HIは最高。