年中無休で恋心

たのしいおたくライフを送っています。

2021年映画ベスト

2020年のおうち時間をきっかけに映画を観る習慣ができたため、年間ベストを考えるようになりました。去年は映画を観始めた年でもあったので、観るべき旧作も多く、旧作新作ベストを挙げました。

 

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年の後半になるにつれて、世界にはこんな数映画があるのに時間が足りなかったなと反省。

2021年はペースあげていかなきゃと、去年見逃してしまった作品、観るべき名作、去年よかった作品の監督の過去作を辿って観ていたんです。それで正月から『岬の兄弟』を観てしまったりしてね…(岬の兄弟は大傑作だが正月に観るもんじゃない)。

 

年が明けてまもなく、新作も素晴らしいものが結構な数公開されました。花束現象なんかもありましたね。みんな観て!!と大騒ぎしてしまうような力のある作品も多くて。とくに邦画がすごく良かったじゃないですか?

ただそんなふうにしてあまり頭が整理できないまま色々観た結果、何を観点にベストを選べばいいのかわからなくなっていきました。

 

もともとミニシアターで上映されるようなインディーズな作品、静かな作品、社会的な問題を扱う映画を好んで観る傾向があり「エンターテイメントとして上質な時間をくれた」といった選び方のほか「こういう映画こそ広まってほしい」と願うような気持ちを持つこともありました。

さらに今年は「新しい映画体験!」「こんなテーマを映画が扱うなんて!」「この観点は新しい」など、映画の社会的インパクトとして評価せざるを得ないと思わせてしまうような作品もあり、そういうものをランキングから外せないという意識も持ち始めます。

「何度も観たくなるほど好き」という気持ちと「初回に観たときの衝撃が忘れられない」という気持ちは全く違うものだけど、どちらもベストに入るものとは言えるでしょう。

 

さらには今年俳優の推しもできたため、自体は複雑なものになっていきます。推しの作品は特別。それはそうじゃないですか。

ひとまず推し問題については、気が済むまで推しのことを考え、フラットになることを目指すという取り組みでいったん解決しました(解決?)。

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年末になっても考えられなかった映画ベスト、動くきっかけになったのは締め切りです。まあ、何かある日ぱっと思いつくだろ…。色々頭だけで考えてしまい、天から何か降ってくるの待ちにさえなっていましった。

仲間内で映画ベストを発表しあう会が近づいて、いよいよ決めなければと、まずは「映画ベストを考える方法」から考えて決着をつけることにしました。わたしは真剣です。真剣に映画ベストと向き合っています!!!!!

 

 

 

色んな自意識を吹き飛ばして客観視できるよう、まずは作品名をひとつひとつ付箋に書き、100均で買ってきた白いパネルに並べてみました。もうわたしの脳はフィジカルに頼らないと動きません。

 

今年見た新作60、旧作91作の作品名を俯瞰して見ると、この作品たちのためにどんな人数の人間が動いてきたんだろう…と果てしなさを感じます。そして、「なんだかとてもおこがましいことをしているのでは」という気持ちにもなってきました。

 

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果てしなさに身を預けても仕方がないのでとにかく手を動かしてみることにし、「何度も観たい」「もう観たくないほどの衝撃」「人に勧めたい」「逆に人に勧められないくらいコアな好みだけど愛しい」など色んな観点で並び替えまくります。

好きな映画を切り捨てなきゃならない行為はきついこともあり(好きでやってるのに)、順番をつける不条理を感じたり(好きでやってるのに)しました。

 

しかしあるときから、ある作品の付箋を手に取るとときめくようになってきました。

こんまりメソッド?

 

 

これが「好き」ということかもしれない……………

何だか悟りを開いたような気持ちになりました。

 

 

自宅でひとり謎のワークショップを繰り広げた結果何かを掴んだわたしは、公開時期を区切り、新作のみ絞って2021年らしいベストを作ることにしました。

2020年12月〜2021年11月公開作品とします。

(12月は今年が終わると焦ってる間に終わるから全然映画が観れない為)

 

ここまでが長くなりすぎたんですがいよいよ発表します!!!!!

 

第10位 ひらいて

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衝撃のわからなさ。
ノローグが一切ないのに、登場人物全員想定外の言動しかしません。ヒントがないのでマジでわからない。最後の台詞は特にわからなすぎて、家で観てたら声出てたと思います。

 

愛しい〜!!!!!!!

思春期の女の子たちの抑えきれない激情、好きゆえの過剰反応、自分でもわけがわからなくなってしまうような行動のことはもっと個人的にしまっておくべきものと思っていました。こんな規模の映画にしちゃって大丈夫なの!?好きだよ。好きです。

全体的にピンクがかった画が、カメラアプリのフィルターを知る世代の映像って感じがして、そこにも何かこう、情念みたいなものが篭っていて、いいなあ。実にいいよ。

首藤凛監督は原作小説『ひらいて』に衝撃を受け、映画化するために映画監督になったとインタビューで読みました。そこで原作も読んだんですけど、話の構成や扱うモチーフが全然違うのに真髄が大切にされすぎてて、その愛にさらに感激しました。これは原作おたくの壮大な二次創作。

 

第9位 燃ゆる女の肖像

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勢いでブログ書いたくらいに鮮烈だった映画体験。

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とにかく美しい。映像が美しい。暗い場面も明るい場面も、本当に綺麗で、それだけでガシガシと魂を揺さぶられました。人間が好きじゃないとこういうものは撮れない。

女性にまつわるテーマの良作が近年本当に豊富だと思いますが、群を抜いて好きです。

 

第8位 ファーザー

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映画体験として新しすぎる!!

没入感を与える実験映画としての発明を面白がることなく丁寧に作られた作品であることが伝わってくる作り込みがされていて、それゆえに飽きないで最後まで集中できる。考察したくなるようなアイテムも散りばめられていて、とにかく凄いです。好みとかいうものを超えて2021年といえば、の一作。

ネタバレ完全NGのため、「ヤバイから観て」とカルト的な口コミをせざるを得ない興奮もありました。

 

第7位 由宇子の天秤

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自分の使うもの含めて、「真実に迫る」「正しさ」という言葉がいかに薄っぺらいものなのかを突きつけられるようでした。2時間32分と比較的長尺なのに、ずっと緊迫感があって、気がついたら息止めてました。

 

これは個人的な体験なんですが、渋谷のホテル街ど真ん中にある映画館でこの映画を観ました。23時頃に上映が終わり、フラフラしながら外へ。早く帰ろうとした曲がり角、急に視界に入ってきた女性に「100円でいいからください」と声をかけられたんです。目の前で広がる風景と、いつもずっと繋がっている映画を今観たのだ、と思い知らされたようで帰宅後どうしたらよかったのか考え込んで泣きました。

 

第6位 すばらしき世界

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芸能関係者の反社会的勢力との関係性が暴かれ、社会的に裁かれるということがメディアで連日報じられていたことも記憶に新しい中、反社会的勢力の現代的問題を描く作品が増えてきましたね。

2021年に『すばらしき世界』があったことで、この作品を指標に他の作品を見てしまうような影響力が自分にとってありました。人の優しさ、優しさを示すために人に投げかける言葉や行為に普遍的なものなどないかもしれない。知らない世界の優しさを教えてもらいました。こういうことをしてくれるのが映画だなあ、と思った作品。役所広司さんがとにかく素晴らしい。

 

あと、ROLANDがこの映画にコメントを出して「共感する」と言っていてグッときました。

www.youtube.com

 

第5位 あのこは貴族

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大好き。これもブログ書いた。

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シスターフッドものって大好きなんだけど、いつでも一緒にいるバディ的な関係にも、NANAのようなほとんど恋みたいな関係にも、自分は共感できないでいて、わたしって冷たい人間なのかなあと思う時期もありました。でもそうじゃないんだよな。

人との出会いがどれだけさりげないものだとしても、人生を変えてしまう忘れられない存在として、支えてくれる人はいる。また出会えたら握手したい。そういう東京っぽいつながりを肯定してもらえたような気持ちになり、自分が解放されたような感覚です。

 

門脇麦が最高、水原希子は最高、というのは大前提として、高良健吾がすごくなかったですか?かわいそうな人にも、ヤバイ男にも見える絶妙な演技でしたよね。

 

第4位 少年の君

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全シーン写真集のような美しさ。

いじめ、ストリートチルドレン、受験戦争。非行少年と少女の出会いを中心に添えた物語。テーマとして新規性があったり映画表現として新しいものが評価されやすい傾向にある中、スタンダードなテーマ、やり尽くされたプロットを丁寧に繊細に描き直すというのはとても難しいことなのではないでしょうか…。その気概が好きです。

身体的痛みを伴うくらいにボロボロになりながら鑑賞しました。特に主演のチョウ・ドンユイさんの丸刈り姿になってからはずっと胸を押し潰されている気持ちでした。

 

第3位 BLUE

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ねえ、みんなのもとにBLUEは届いていますか? 

緊急事態宣言の影響で上映時期が不運すぎた本作、映画館にも行けなかったから予告にも出会わなかったんですけど、ギリ観に行けた人の評判が良すぎて配信されて即観ました。そして口を開けばBLUEの話してたくらいの大騒ぎ。

夏休みのたびに再放送されていったあの『タッチ』の日本人視聴率と同じくらい見られるべき。生涯ベストは何ですかと問われたらBLUEです、と言うと思う。

何者かにはなれなかった人生がこんなにも美しい、ということを見せてくれる本作には、ありがとうの気持ちでいっぱいです。

 

第2位 くれなずめ

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劇場で複数観て、副音声つきで観て、Blu-rayも買って観て、Amazon prime videoでもマイリストに入れていて、リビングで流しっぱなしにして過ごす環境映像にしているくらいにずっと観ている映画なんですけど、びっくりすることにいまだに観ると心に爆風が吹くんですよね。

悲しい別れが多かったこの数年、人を悼むという行為について考えることが多かった。ズルズル引きずっても、曖昧なままにしても、カッコ悪くてもいいよと言ってくれる優しさにとても救われています。ああ、こんなバカな映画なのに『くれなずめ』の話すると泣いちゃうんですよね。好きすぎる。

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そしてこの作品で藤原季節に出会いました。

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第1位 空白

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『空白』が公開された2021年に映画が好きで良かったな〜!!劇場で観たこと、後世に自慢できるな〜!!と思うような作品でした。スターサンズと吉田恵輔監督のタッグ、間違いないと思ったら本当に間違いがない幸せ。藤原季節も最高の役で出ている。最高。

 

社会派、サスペンス、家族もの、メディアの役割を問う。色んな切り口で紹介できる作品だと思うんですが、それらのテーマに関心がなくても、そもそも最高のエンターテイメント作品であるということが大好きポイントです。人への不寛容、それで生まれ得る断絶、「正しさ」を前にした人の視野の狭さ、人を許容できなくなった社会の空虚さ。これらが視野にいつも入ってしまう今だから、観て感じることがある大傑作。とか言いつつ偏差値2のテンションで観ても面白い。

最悪の事件から物語が始まり、その事件の真相ではなく事件をきっかけにした人間模様の地獄を中心に描くド重い作品であるいっぽう、その人間描写が「ヤバすぎて笑えてしまう」ところがあり、それがどちらかに過剰に転ばないところが凄いんだと思います。吉田監督の人間観察力だろうなあ、マジでこういう人いそうだ!という実存感と劇映画ならではの表現のバランスがたまらない。めちゃくちゃ嫌だ!!!!!!勘弁してくれ!!!!!と思いながらもなんか見ちゃう。ちゃんとずっと面白いんですよね。最高じゃんか。

特に嫌だったのは麻子役の寺島しのぶさんが、松坂桃李さん演じる青柳店長の腕に触るシーン。彼女なりに触っていい根拠づくりをして、正しい行動をしていると彼女が思える理由をつけて触っていることが分かっちゃう自分に嫌気がさしました。いいわけないんだけど…。

 

 

本当に好きすぎた作品がたくさんあったので、ベスト20まで名前だけ紹介させてください。特に『ドライブ・マイ・カー』『のさりの島』は繰り返し思い出しては好きなシーンをノートに書き出して反芻しているほど大好きで、ブログも書いたほどだし

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10という区切りの数字を嫌いになりそうでした(身勝手)!

 

1位 空白

2位 くれなずめ

3位 BLUE

4位 少年の君

5位 あのこは貴族

6位 すばらしき世界

7位 由宇子の天秤

8位 ファーザー

9位 燃ゆる女の肖像

10位 ひらいて

11位 ドライブ・マイ・カー

12位 のさりの島

13位 ヤクザと家族

14位 まともじゃないのは君も一緒

15位 映画大好きポンポさん

16位 シン・エヴァンゲリオン

17位 サマーフィルムにのって

18位 リトル・ガール

19位 DIVOC-12

20位 ビルド・ア・ガール

 

 

ということで2021年映画ベストでした。

人のベストを聞くの大好きなので、ぜひ聞かせて欲しいです。