年中無休で恋心

たのしいおたくライフを送っています。

2022年ベスト映画

楳図かずおが「恐怖」のことを、進化の中で人間のDNAに刻まれた警告のサインだと語っていた([時代の証言者]怖い!は生きる力 楳図かずお 86<1>恐怖マンガ 子供のため : 読売新聞)。災害を逃れ、動物から身を守り、飢えをしのぎ、人間の知恵は怖さをきっかけに進化をしているわけだから、人間には恐怖が必要だと言われれば納得する。便利で洗練されて安全な都会で生きてきた現代人にとって「怖い」という感覚は、知恵のおかげでもう日常的には感じることが少ない。ホラージャンルのドラマや恐怖漫画からの想像力だけで構成されているとすれば、ちゃんとそれを知覚できる想像力を持っておくために、作品との出会いは必要だ。

 

おそらくそれに似た、想像力だけで構成され得る感覚は、怖さに限らない。

 

コロナ禍になってから映画を観る習慣ができ、かたっぱしから人の勧めを観るところから始めた鑑賞にもやっと好みみたいなものが見えた。それは自分の体験したことのない感覚、あるいは自分ごとであったのに無視してきた感覚を丁寧に取り出して、ひとつひとつ分解して、順を追って見せてくれる作品たちだった。映画について歴史的観点や潮流をふまえた作品評のようなものは残せないけれど、映画鑑賞をとおして見つけ出してきた感覚を書き残しておきたく、こうした時間を与えてくれた作品たちをベスト映画として一覧にしたい。

 



11位 そばかす

どうしても削れず11位を挙げてしまうくらい自分ごとの話だった『そばかす』。他人に恋愛感情を抱かない女性が、周囲と向き合いながら自分自身を見つめる姿を描いたドラマ。

notheroinemovies.com

 

木暮(伊島空)の働くラーメン屋で営業後二人で過ごし、佳純(三浦透子が木暮に教えてもらった麺湯切りを練習しながら、ひとり楽しそうに帰り道を歩くシーンが大好きだった。わたしも好きな友だちと会った帰りにああいう行動をとる。

 

誰かに対するときめきを恋と言われるたび、もやもやと切ない気持ちになった。いつの間にだか恋の話ばかりになった女の子たちの中に居にくくなっていった。あれはどういうことだったんだろうなと考えるのも困難で、困難なままなんとかやっていこうとしていた部分を、ちゃんと面白く読み解いてもらえた気持ちになった。誰かに対する親密な気持ちが恋愛と交わらずとも尊い、上下がない愛情としてもらえたことがとても嬉しかった。

ここまでの部分でもかなり好きだったけれど、「恋愛や結婚に価値観を置いていないことと、恋愛感情を誰にも持たないことは違うことである」と自然と頭が整理され、分かった!となる感覚が訪れ痺れた。そのすれ違いの微細さに人への思いやりがあった。 作中の笑いについてもとても優しく捉えれていて、色んな感情を自由に持て、居場所をもらえるようだ。

アサダアツシさん脚本と知って公開前から楽しみにしてたけど、想像もできない鑑賞後の感覚、こんなに心が解放されるような作品で幸せだった。佳純と、真帆と、友だちになりたい。大人になってから人とどう友だちになるか、とか、日常で置いてけぼりにしてた色んなことが過ぎった。

 

10位 ベイビー・ブローカー

gaga.ne.jp

赤ちゃんポストを巡る物語を描く、是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』。

借金に追われるサンヒョン(ソン・ガンホ)と、赤ちゃんポストのある施設で働く児童養護施設出身のドンス(カン・ドンウォン)の裏稼業は赤ちゃんを売るブローカー。ある晩、2人は若い女、ソヨン(イ・ジウン)が赤ちゃんポストに預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく赤ちゃんを連れ出したことを白状する。成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることになる。偶然居合わせた人たちが家族になっていく、ある種のロードムービー

 

大所帯で過ごすホテルの夜、雨が降りそうだから傘を持っていったらと仲間に声を掛けるシーンがたまらなかった。ああ、あれは優しさをうまく伝えられなかったり、優しさをうまく受け取れなかった経験のある人にはきっとわかるすれ違いだ。提案された人物は、傘を持たずに笑って出かけた。何の意図もなく優しくされたことがないから「ありがとう」と傘を持つことができない。変な遠慮の仕方をしてしまい、受け取ることが優しさだと理解できない。人は生まれながらに優しくても、優しさをどう具体的な行動にすれば良いのかは生まれたままでは分からない。それは覚えておくべきことだと思った。

人に大事にされることに慣れない皆が優しい行為を探る様子が映る美しい映画で、そこに希望があるのが良い。

 

9位 シラノ

eiga.com

すぐれた詩を書く才能を持つフランス軍きっての騎士シラノ(ピーター・ディンクレイジ)は外見に自信が持てず、ロクサーヌに恋心を告げられずにいた。そんな中ロクサーヌはシラノと同じ隊のクリスチャン(ケルヴィン・ハリソン・Jr)に惹かれていた。それを知ったシラノは彼らの仲立ちをするため、クリスチャンに代わって自身の思いを込めたラブレターをロクサーヌに書くことになる。

 

10年くらいになるアイドルおたく人生を振り返ると「触れられない相手だからこそできる、やりすぎる愛」に心当たりがありすぎて、わたしの人生もこんなに壮大なドラマだったのかと勘違いした。まあわたしなんてせいぜいライブがある時に感想を手紙にし、日常的にはTwitterで推しにリプライ書いたり推しのよいところをツイートするくらいなものだ。シラノは戦地から毎日手紙を書くんだからはっきり言ってレベルが違う。

 

言葉と手紙のことをとても大切に思っているので、人生の根幹のテーマにさえ触れるようで色々思うことがあったけど、それがどうでもよくなるくらいにロクサーヌ役のヘイリー・ベネットが可愛い。誰かに求められる女性像でもなく、自律的で、自然に現代の自分のまま感情移入できる女の子であると同時に、手紙に喜び舞い踊る姿があまりにもキュート。夢のように可愛い。

17世紀フランスを舞台にした美術、衣装、ミュージカル要素、どれもが煌びやかすぎずに洗練されているのも、シラノの心と言葉を現代の物語として読み取れるようになっていて品が良い。

 

8位 さかなのこ

sakananoko.jp

 

沖田修一監督『さかなのこ』。幼い頃から魚が大好きで、学校の勉強や日常のことは置いて魚ことばかりに打ち込む。現在は研究者・イラストレーター としての活動で知られるさかなクンの半生を描いた映画。

好きなことを貫くキュートでコミカルな人生の側面をさらっても、人とは違う生き方を選ぶ人と「共にあること、共に生きること」とはどういうことなのかを考える視点でも、どちらで観てもいいし、どっちにも寄っていないのがとても好きなところ。『佐々木、イン、マイマイン』で高校生の頃自分のヒーローだった愉快な男・佐々木は心の中に生きる形で存在したけど、さかなのこではみんなのヒーロー・さかなクンことミー坊はずっとそこにいる。

 

あまりにも良過ぎて逆に細かいところの話しかできないのだけれど、ミー坊と出会って心ほぐれてゆくヤンキーたちが大好きだった。物語は多様で無垢で、時折あまりにもさらっと残酷で挫けそうになるけど、彼らを見てると全員なにかの主人公だったことを思い出せる。正直観るまでにかなりノイズがある作品だと思うのだけれど、口コミでちゃんと広がってくれたおかげで観られた。本当によかった。

 

7位 スペンサー ダイアナの決意

spencer-movie.com

 

撮影監督が『燃ゆる女の肖像』のクレア・マトンと知り期待したけど想像以上、美しい瞬間しか撮れない方なのかなと思うほど。 寓話であるとの註釈から始まる本編はダイアナの心情に集中していて、彼女の苦しみと錯乱に没入する。現実と幻想が入り混じる映像は、酔う人もいるかもしれないくらいセンセーショナル。

特に凄かったのは、あることをきっかけにパールの入ったスープを飲むシーン。夕食、式典、細かく決まっている用意された衣装を着なければならないことを拒み、アクセサリーとドレスをどう組み合わせようか、衣装係と話しあって決めようとするダイアナ。彼女がピスタチオ色のポタージュに浮かぶ大粒のパールを掬うスプーン。狂気が美しさと隣り合う色彩に、ダイアナの凛とした姿勢に裏付けられた美的感覚を圧倒されながら感じられた。驚きと共に励ましをくれるシーン達に震えっぱなしだった。

 

実在する人物、それも圧倒的な人物が冠にありながらもこの映画が寓話で、リアリズムと離れたところにあるというところも素晴らしい。もう女性たちは閉じ込められたり意味のないルールに縛られたりはしない、と宣言しているよう。

 

それでいうと、セリーヌ・シアマ監督『秘密の森の、その向こう』とても好きな映画だった。

gaga.ne.jp

わたしが生まれる前の母は、どんな人だったんだろう。母という存在になってしまうその人と、まるで姉妹になれるのは希望的。ケアの描かれ方、女性として世代を紡ぐ事、『燃ゆる女の肖像』にも通じる思想のあるアプローチ。

 

 

6位 わたしは最悪。

gaga.ne.jp

『わたしは最悪。』!タイトルを見返すだけで心躍ってしまう。

30歳という節目を迎えたユリヤ(レナーテ・レインスベ)。いくつもの才能を無駄にしてきた彼女は、いまだ人生の方向性が定まらずにいた。年上の恋人、パーティーで知り合った若い男、恋愛に身をゆだねながら自分を見つけ出そうとするが…というお話。

 

わたしの人生なのに傍観者で脇役しか演じられない、何かが違う、と引っかかることに身体が抗えない主人公ユリヤ。「もっと圧倒的な才能や個性や人生でないとダメなのではないか?」は現代的な問いだと思う。もっと生命維持に必死だった時代、もっと考える暇がなかった時代の問いしか前人たちは知らないし、刷り込まれていないから、まだ見ぬ現代を生き抜くモヤモヤを言語化するまでには時間がかかってしまう。今の状況へのちょっとした違和感に折り合いを付けていくことを成長、としてきた女の子たちへの応援歌みたいだ。大好き。

 

この映画と近しいところにあって挙げられなかったけれど『セイント・フランシス』も好きだった。

www.hark3.com

レズビアンカップルの元で育つ6歳の女の子のお世話をするひと夏のお話。「何者かにならなきゃいけない」何となくの時代的圧迫感にコミカルに応えていってくれる。30代女性の妊娠、中絶、生理、産後鬱をめぐるリアルとモラトリアムな気持ちが、物語の点としてでなく日常として物語ってくれるのが心地よい。

 

5位 ケイコ 目を澄ませて

happinet-phantom.com

 

生まれつきの聴覚障害で両耳とも聞こえないケイコ(岸井ゆきの)は、プロボクサーとしてリングに立ち続ける。危険な行為をいつまで続けるのかと問いかけられること、勝負への不安、言えない思いが積み重なってゆく。

 

先行上映の会に立ち会うことができ、原案のボクサー小笠原恵子さんがサプライズ登壇。聴覚障害をもつ小笠原さんは「(字幕がないから)邦画が観られない。初めて素晴らしいと思った」と。想像できない世界が一言で伝わり、岸井ゆきのさんも涙ぐんでらして、こういうことを起こす映画の強さを感じた一瞬だった。

劇中のケイコは耳が聞こえず話さないといったことを考慮せずとも寡黙で思慮深い。わたしはボクシングを見ていてボクサーを美しいと何度も思うのだけれど、人を殴るという気持ちが、これまでどうしても分からずにいた。そこに焦点はないんだということを映画の中で知った。ボクサーはなぜ人を殴るのか、殴る気持ちがないと危険なのはなぜなのか、葛藤の中にあることが静かな世界の中で確かに感じられた。

16mmフィルムの質感も美しく、目しか映らなくてもボクサーとわかる岸井ゆきのさんがとにかく素晴らしい。

 

4位 THE FIRST SLAM DUNK

slamdunk-movie.jp

 

わたしすっごい運動音痴なんですよね。だからこの映画で初めてドリブルをしたり、ドリブルで人を抜かしたり、思わぬところから人が出てくる体験をしました。ハイタッチしたい気持ちとかも初めてわかる気がした。すごい。

 

3位 わたし達はおとな

 

デザインの勉強をする大学生の優実(木竜麻生)には、チラシデザインをきっかけに知り合った演劇サークルに所属する直哉(藤原季節)という恋人がいるが、ある理由のせいで妊娠をなかなか言い出せない。やっと打ち明けるも、その事実を受け止めようとするほどすれ違ってゆく。直哉と優実の暮らしを覗き見るような恋愛映画。

 

わたしには子どもに関する倫理観に地雷が細かくあり、久しぶりに思い出してあらすじを書こうとするだけで気持ちがきつい。それを置いても素晴らしい名作だと思うんだけど注釈付きで観ないと傷つきます。

笑っていいのか悪いのか、扱いにくい人物像のリアリティ。誰かを好きというシンプルな感情も、瞬間ごとに自分優位の関係にしようもしたり、何か隠したり、グラデーションであることに自覚的になってゆく。

特に会話の中での「質問」の扱われ方は印象的。純粋に疑問を解消しようとするのはもちろん、 話順を操る側に立つことにより、相手との関係性をコントロールしようともできるのだと思う。 加藤拓也さんの脚本は、こういう人の無意識で構築されているルールの怖さに気付かされる。

 

藤原季節の「それらしきポーズをするのがやたらうまい男」感、全身から溢れ出てて天晴れ。たぶんミュートで観てもわかる、話半分でコミュニケーションをとる人の感じ。そして絶対好きになってしまうビジュアル。ほんとに嫌いです(役の話です)。
木竜麻生さんも、大学生のときちょっと(すごく意地悪な言い方だけど、ちょっと、というのがミソ)付き合ってみたい子として夢が詰まりすぎてる服装、顔をしているんだなあ……あーなるほどねこういう子、ああ……だよね……という感想になる。
衣装、美術、ロケ地、全て素晴らしい。微細なところの話もぜひ聞いてみたい映画。
 

色々書いて好きなのか嫌いなのか混乱するけどラストが良い。主人公にはなれなくても、日常は美しい。精神的グロ大名作。

 

 

2位 こちらあみ子

kochira-amiko.com

 

小学校5年生の風変わりな少女あみ子。書道教室を営む母、優しい父、しっかりした兄、憧れの男の子。平和な毎日だったがあまりにも心や衝動に素直なあみ子が起こす出来事が積み重なり、少しずつ周囲との生活が変わってゆく。

あらすじを物語ると哀しさばかりが浮きだされていくけれど、映像が楽しくて、裸足で木製の床を初めて走ったときみたいな気持ちよさがあった。匂いや音や声がする。子どもの頃に感じた手触りのちゃんとある、五感とともにある世界をもう一度見せてくれる。蟹とかにむさぼりついて世界の感触をわたしも取り戻したい。

 

子どもや自然をそのまま閉じ込めてあるのにちゃんと脚本があり、とにかくどう撮っているのかさっぱり分からない。何度も、こんなに完璧なことがあるのかなと思うようなものが映っていた。

 

1位 裸足で鳴らしてみせろ

www.hadashi-movie.com

 

『裸足で鳴らしてみせろ』のことを思い出しては気が緩んだり緊張したりして涙が出そうになる。初めて観た日、本当に何が何だかわからず感動した。個人にあてて作品を勧めることをしてこなかった自分が、観に行ってほしいと今年唯一伝えた一本。いちばん感覚的なことを与えてくれた映画。

父の不用品回収会社で働く直己(佐々木詩音)と、市民プールでアルバイトしながら目の不自由な養母の美鳥(風吹ジュン)と暮らす槙(諏訪珠理)。ふたりは美鳥の夢をかなえるため、世界旅行をしている程で各地の音声を届けようと企てる。サハラ砂漠イグアスの滝など各地の名所の音を記録していく中、互いにひかれながらも触れ合うことができない。言葉にできない思いは、じゃれ合いから暴力的な格闘へとエスカレートしていく。

 

誰かに好かれるためのテクニックが溢れ、愛を掴むことがまるで方程式みたいに語られるこの世界で、 そもそも愛は世界から求められる形に収束しなくてもいいはずだと気づくには勇気がいる。

結婚しなくても良いし、恋愛をしなくても良いし、友だちや家族と無理に一緒にいなくても良い。すごく好きな他人がいて良いし、大切な人と一緒に暮らさなくても良いし、それぞれの愛し方があって良い。抽象度を上げてシンプルな文字にすればその倫理観は何のことはなく当たり前にそう思えるが、その倫理観を日常の話に落としこむことは実はとても難しい。独身を貫くわたしは急にそのことを小馬鹿にするステレオタイプを投げかけられ驚く瞬間がある。相手は世間的なおじさんではなく、同じ時代に生きていて、好きだと思うところが多い同性であることは少なくない。大人になれば誰かひとりと連れ合うことが正しい形であるように見えてしまうのだと思うし、何もないところから愛の話を考えはじめるにはわたしたちはあまりにも忙しい。だからこうして、糸をほどき直してくれる映画に出会うことは幸せだ。

 

誰かに触れたいと思うことを自分の中でどう整理すればいいか分からない、そこから始まっても良いんだよね。だって言えないよ触れたいなんて、勝手にゲームを始めてタッチしたり、話につっこむところを見つけてバチンとしたり、言い訳がないと触れるなんて正気なままでできるわけない。

愛や夢といった触れられないものを知らず、触れられるものしか信用できない孤独を抱えている男の子が抱えたはじめての気持ち、人に触れたくなってしまった自分の心をうまく発散できない葛藤に共感してわんわん泣いた。ああ、ものすごく透明な心に戻されてゆく。泣く映画が良いわけではないと思うけど、これを観て泣くことが必要な人がいると思う。

 

全体を流れる青の色彩、二人のいる画がものすごく映画的で綺麗なところも手放しに素晴らしい。諏訪珠理さんは裸足の足が写るだけで憧れの男の子の説得力があるし、佐々木詩音さんはすごく線が細く繊細そうで、どこか狂気めくというか、どうなるか分からない感じが同居していた。

触れたいという感情の行方さえ模索する純粋な彼らが守られますように。わたしの中ではクィア映画の最高傑作。工藤梨穂監督の今後が本当に楽しみ。

 

 

他にも特筆すべき好きな映画がたくさんあったので、断片的にメモを残したい。

 

その他好きだった映画たち

中村屋酒店の兄弟』

nakamurayasaketennokyoudai.com

自分の家族観との違いを見つめすぎず通り過ぎてゆくことも許してくれる家族の映画、どこかひとつでも触れるところが違ったらきっと伝わることが変わってしまうだろう丁寧な兄弟描写が大好きだった。ブログも書いた。

door-knock.hatenadiary.jp

 

『愛なのに』

lr15-movie.com

城定秀夫監督が監督、今泉力也監督が脚本。最高に面白いので「最高です」だけで勧められるのが良い。色々勇気がなくて感想が詳しく書けないが城定監督の『ビリーバーズ』も最高だった。

believers-movie2022.com

 

『恋は光』

happinet-phantom.com

ファーストカットから素晴らしくて、ずっと大好きだなと思いながら没入した青春映画。「好き」って感情はなんだろう。恋とは。大人になりそれを言語化することを疎ましいと思われている気がして蓋をしていたかもしれない、丁寧に紡いでくれていて嬉しい。

 

『誰かの花』

g-film.net

2021年から、罪とはいったいなんだろうかと問う作品が多くリリースされていたと思う。本作のテーマは「善意から生まれる罪」で、その先に救いがあるのかを見守ることができる。好きだったなあ。

 

『愛について語るときにイケダの語ること』

ikedakataru.movie

四肢軟骨無形成症で身長100センチ、イケダさんのセルフドキュメンタリー。自立していること、おもしろく生きることへの異常な執念、明るさ、イケダさんが好きになる。かっこいい。

 

『ライフ・ウィズ・ミュージック』

www.flag-pictures.co.jp

自閉症を持つ少女ミュージックに見えているカラフルな世界、音楽パートが可愛い!アルコール依存症と闘うズー、近隣の人たちのラインを引いた助け合い、関係性の構築もとても好印象。

 

スワンソング

swansong-movie.jp

ゲイである自分は家族を作って自分の記憶を繋げないことをぽつりと話してたけど、思わぬ形で遠くで自分の存在が影響を与えていたことに気付くとことか泣いちゃう。ウド・キアーのゴージャスさ!

 

『辻占恋慕』

tsujiurarenbo.com

30歳を過ぎ、夢のサイズへの諦めがつかなさと闘ったり、闘うふりしてごまかしたりしてしまう全ての表現者とその愛すべきおたくたちに捧げたい。ライブハウスでSSWがチェキをやる葛藤が、アイドルの対バンを観てきた当事者にも不自然さがない再現性。

 

 

『冬薔薇』

www.fuyusoubi.jp

自分にも人にも向き合えないまま、業だけが滲み出てしまう主人公と港町の人と風景の温度感が儚くて綺麗で素晴らしい。映画館の体験ってこうだなって思い出しました。 伊藤健太郎さんへの当て書きされたという脚本すごすぎて…愛されてるんだろうなぁ。

 

『メタモルフォーゼの縁側』

metamor-movie.jp

何かをただ好きであることを互いに肯定しあうことがこんなに素敵な出来事であることを、たくさん知っていてほしいね...認め合いたい。 芦田愛菜さん、ずっとスターなのに、何かになれない気持ちのことをなんであんなに分かるんだろう。すごい誠実さ。

 

実質1位の映画『ジム』

山本起也監督のデビュー作・ドキュメンタリー映画『ジム』を観る機会に恵まれたのは、何といってもアンダーラインを引いておきたい出来事。

鑑賞作品は新作映画 76本 旧作映画 124本 合計200本の2022年、新作という括りを取っ払ったら第1位は圧倒的に『ジム』。

movie.jorudan.co.jp

 

 

勝負の世界にいても、人生に関わる決着だけは自然にはついてくれない現実。それでも何かを見つけようとするボクサーたちの少ない言葉、目が綺麗。 自分が何になりたいのか、どう在りたいのかどこか問われるような毎日に、立ち返るための風景を与えてくれるような映画だった。

 

劇中で朗読される一節「皆、見せ場が欲しいのである」

勝ちたい気持ちがなくなったのかの問いかけに対する「忘れてるだけかもしれないじゃないですか」

突き刺さる言葉が溢れていて、多分に影響を受けた。

後楽園ホールの外階段で試合前に練習をするボクサーの背中と、そこから見える後楽園パラシュートのカットが鮮烈。感情の揺れと胃の浮き上がってくるような緊張がひどく乗り移ってくるようで、ちょっと観たことないシーンだった。スクリーンで観たい作品、ぜひまた機会がほしい。

 

本作は約20年前の作品だけれど、配信や販売のない本作が自主上映会で鑑賞が叶った。わたしにとっては期待の新作だったわけで、実質1位です。

映画はこうして時を超えて出会っていけるのだなと経験できた2022年、これからも映画と出会える感覚や経験を大切にできたら。